第13章
貴族の屋敷でのお泊まり会
「貴親様」
佐伯の落ち着いた声が部屋に響いた。
「とても楽しそうだったので、日之道様のご自宅に連絡いたしました。お母様が、お泊まりになるならきちんと連絡していただけるとありがたいとおっしゃっていました」
「……ごぼうどう?」
なんて言葉だろう
。聞いたことのない言葉だ。
母のことだと分かるまで一瞬かかった。
時計に目をやった。もう午後5時だった。
普段なら、もう家に着いているところだ。
「お母さんが心配しているよ」貴親はさりげなく言った。
「ごぼうどうというのは、お母さんのことだ」
「日本語には、同じことを表す言葉が多すぎるわ」と私は呟いた。
日本というのは本当に恐ろしい国だ。
「日之道、携帯持ってる?」
「うん」
「じゃあ電話して。今夜は泊まるって伝えて」
「……してもいい?」
「うん」
私は頷き、携帯の電源を入れた。
「もしもし、お母さん」
「あら、ニア!帰りが遅くなるなら前もって教えてね。今夜は何をするの?」
「泊まるの。明日は学校に直行するわ」
「わかった。でも、次はもっと早く連絡してね」
「ごめん」
電話が切れた。
「ちゃんと親に電話するんだね」とタカチカが言った。
「すごいね」
「メールより早いね」
タカチカは納得したように頷いた。
こうして急にお泊まり会が決定した。
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子どもの頃から大人になってからも、友達の家に誘われたことはあったけれど、ちゃんと泊まったことはなかった。
なぜか、予想以上にワクワクしていた。
「タカチカ様」と佐伯が言った。
「夕食とお風呂は何時に入りたいですか?」
「えっと…まずは宿題を終わらせないと」
ということで、六時にお風呂、それから夕食。
「ヒノミチ、和食と洋食どっちがいい?」
「洋食」
私は即答した。
母の料理は美味しくて、和食も好きだったけれど、最近は洋食に飢えていたのだ。
「フィッシュアンドチップスでもいいんだけど」と私は付け加えた。
「マジで?それよりいい選択肢があるわ」
隆親は佐伯の方を向いた。
「イギリス人が好むものを用意して。フィッシュアンドチップスも入れて」
「承知しました、隆親様」
こうして勉強会が始まった。
隆親が先生なので、宿題は避けられない。
国語、数学、理科――
どれも全く理解できない。
隆親は辛抱強く説明してくれたが、私には半分も理解できなかった。
なぜなら私はニア?サンウェイだったからだ。
サッカーに人生のすべてを捧げ、勉強など一度も気にかけたことのない男だった。
そして夕食の時間になった。
テーブルはまるで高級ホテルのテーブルのように、
フルコースの料理がずらりと並んでいた。
カトラリーも完璧に整えられ、
手を洗うボウルまで。
信じられない思いで、その料理の数々を見つめた。
一体ここは高級レストラン?
中学生のお泊まり会なんかじゃない。
貴族の晩餐会だ。
なのに、なぜか…
招待されたのだ。

